エゴイスト・マージ



『ゲームしよ』



自分でも馬鹿げた提案だって自覚はある

だけど先生に正攻法は通用しない

ゲームだと銘打てば
修正もリセットもきく



…なんて言い訳じみてる

本当は

傷つくのが怖いから


理由はこの際なんでもいい
何かキッカケが無いと何も始まらない
先生を変えたい

それは、私じゃなきゃイヤなの



「……意味が良く分かんねー」

「先生が色々な父兄と付き合ってること
学校にバレても良いの?」


「ぶ。お前、ソレ脅してるつもり?」

鼻で笑われたけど、負けない

「言えば?」

「え?」

「言いたきゃ言えばいい
そもそも俺はこの学校に
何の執着も無い

第一、生徒に手は出してない以上
別に大したお咎めも無いしな。
まぁ、本人同士の勝手。
大人の事情ってコトだ」


「でも、人妻にだって……!」

「……何、お前もして欲しいの?」

「なっ!!」


「残念。お子様はパス。」

「違う、全然違うしっ!」


「ハイハイ」

ゼーゼー、ヒーヒーと
なんか恥ずかしさと怒りで
思わず肩で息をしてしまう

そんな私の様子を先生は黙って
見ていた

前髪で片目が隠れた
その顔は凄く冷ややかで
やっぱり無謀だったのかと
諦めかけた時


「良いぜ。

そのゲーム付き合ってやる」

「へ……?」


「ただし、
俺が飽きたトコでオーバー」



「……分かった」



「はぁ」

溜息が出る

ここは2F外れの踊り場
裏校庭に面してるこの場所は
普段あまり人気が無い

考え事をするには一番適していて
一人、ボーッとする時は決まって
此処だった

壁に寄りかかって
さっきのコトを思い出す



あの必死の告白の返事は

『お前バカか?』

ある意味当たってなくは無いけど

取り合えず取っ掛かりだけは
出来た、のかな


「はぁぁぁ……」


「凄っごい溜息」


慌てて口を押さえて見ると
いつの間にか横に裄埜君が立っていた

「何か悩み事?」


びっくりした



「いやいやいやいや」

とても言える訳が無い

「ふ~~ん」

こんなトコ見られたなんて
顔から火が出そう

一体いつからいたんだろう

「悩み、あるなら聞くよ?」

悩みってそうそう口出せること
少ない気がするんだけど

「って、言うわけないか」

といって軽く笑いかけてくれた

つられて私も口元が緩んでしまった

「うん。やっぱ、
女の子は笑ってる方がいい」


「あ、ありがとう」

裄埜君の励ましで
少しだけ心が軽くなった

成程、皆が騒ぐの分かる気がする
どうして、こういう人を好きに
ならなかったんだろう

私はもう一度

裄埜君に気づかれないように
溜息をついた


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