エゴイスト・マージ



先生に気持ち無いと分かっていても
誰とも付き合って欲しくなかった

誰かに笑いかけてる顔も見たくなかった


だけど

所詮”ごっこ”の私に何の権限も無く

私はただの傍観者でいるしか無い現実
分かってるから強くでれない


でもこんな事くらいで
諦めない

決めたんだから

積極的にいこうって


先生を変えようって


いつかこの気持ちが伝わるように






―――そして




いつか


好きだと言ってもらえるように


















「雨音」


下駄箱で裄埜君に声かけられた

「今帰り?」

「あ、裄埜君、練習は?」

「明日から試験だろ。流石に
今日から無いよ。
ウチ、赤取ったら1
週間強制休部させられるし」

「うわっ。キビしいね」

「だろ。そんな事にでもなったら
レギュラー外されるよ」

話しながら自然と一緒に
下校する形になった

夕方だから人通りもまだ結構あって
やはり同じテスト期間にはいるのか
他校の学生も多かった

駅までは商店街を抜けて
すぐの所だから大した距離では
ないけど、私の歩調に合わせてか
裄埜君はゆっくりと歩いて
くれているようで

こういうさり気無さがモテる要因の
一つなんだろうなって
妙に感心してしまった

改札口で切符を買う姿を見て思わず

「アレ?切符?」

「ああ。うんカード忘れちゃって」

「そうなんだ」

確かこの前乗った時も買っていたような

意外とそそっかしいのかな?裄埜君って
何でも完璧そうに見えるから
ちょっとだけ嬉しかった

「何?ニヤニヤしてる」

「ええ?ニヤニヤ??ええ?」

一体私どんな顔してたんだろう

メチャ恥ずかしい


電車に乗り込むと
やはり前と同じように
外を見ながら話した

「雨音って、電車苦手?」

「何で?」

私は電車で人が多いと
まず息苦しさを感じて乗れない

まさか指摘されるとは
思ってなかったので
少なからず驚いた

「なんとなく」

「確かにあんまり好きじゃないど
自転車じゃ遠いし
人混みはちょっとだけど。
この時間帯はそんなに
混まないから楽かな」


「そうか、ならいいけど
乗り物酔いしそうなら
座る席見つけてくるよ」

「大丈夫。でも、ありがとう」

返事の代わりにニコって裄埜君が笑った


降りる間際

「あのさ、今度花火大会あるよね
良かったら一緒に行かない?」




裄埜君が私と?



あまりにも意外な言葉に私は
驚きで固まってしまった


裄埜君って意外に凄い冗談を言う人だったんだ

私そんなに寂しそうに見えてるのかな
と思うとちょっと悲しくなって何故だか
笑ってしまった

「ははは……」


「どうしたの?」

「いやいやいや」

「それ雨音の口癖?」

「……あーかな。ははは」

私はなんとなく笑ってその場を誤魔化してしまった

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