Welcome to the world
もとの世界に帰ると、空はすっかり夕焼けに染まっていた。僕は、客を見送るために玄関に居る。藤高涼歌は深く頭を下げ、言った。
「今日は、ありがとうございました。もう少しこの世界で生きてみようと思います。」
そして、無邪気な笑みを浮かべると、手を振り去って行った。

漆黒の部屋に戻ると、そこには純白の少女がソファーに横たわっていた。チョコレートを齧る少女は、壮絶に麗しく、絶望的に美しかった。彼女もまた、日常に戻る。娯楽と嗜好に溺れた堕天使に。

さて、次の客が来るのは、明日か明後日か、またはもう来ないのか。何にしろ、僕がこの『扉屋』で出来る事は、客の出迎えと見送り、後は適当な接待だけだ。僕は、僕の日常を生きる事にしよう。まず手始めに、鈴の生活を改めさせなければ。

「いい加減、チョコレートばかりの生活を改められてはいかがですか?」

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