Welcome to the world
鈴はその言葉に、更に目を細める。
「なるほど、夢をみたくない…か。」
そう言うと唇を歪め小さく笑った。それは喉を震わせる嗚咽の様な笑いだったが、鈴はやがて腹を抱えて笑いだした。
「クッ……フフ、アハハハハハッ!面白い、実に面白いよ!最高だ!君の様な者は初めてだよ!」
そして、ひとしきり笑い終わった鈴は言った。
「いいだろう。君にぴったりの扉を売ろう。」
その言葉を聞いた藤高涼歌は、ぱっと顔を輝かせた。今にも泣きだしそうな目は、歓喜に満ち溢れていた。
「ありがとう、ありがとうございます!ああ……これで救われる。」
喜びに浸る少女に、鈴は扉の説明及び売買方法について語り始める。
「知ってるとは思うが、私が売る扉は普通の扉ではない。別世界へと繋がる扉だ。よって、向こうの世界に行けば戻っては来れない。また、周りの人物も一新される。誰一人同じ者は居ない。私『扉屋』以外はな。
次に売買についてだ。まずは君に、扉の向こうの世界がお気に召すかを試す。お気に召さなければ、無理に買う必要はない。扉や別世界の事は忘れて、日常に戻ればいい。もし、気に入ったなら買えばいい。値段は私の言い値だ。
他に質問は?」
鈴の冷静な語りに耳を傾けていた藤高涼歌は、一拍おいて答えた。
「今は、ないです。後は、扉や世界を見てから。」
鈴は満足気に頷くと、すっと立ち上がった。
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