世界が逆転した日
ごめんね、男に抱き付かれたくなんてないよな。

いつまでも二人でいたら亮ちゃん以外のメンバーに不審に思われるかもしれないとか、20代後半の男がすることじゃないとか、そんなこともう考える余裕がないんだ。

今だけ、こうさせてよ。

今日の俺は酔ってるから。
だからさ、明宏と女の子を間違えて抱き付いちゃっただけなんだ。

そういうことに、しといて。

こうしてるとあったかくて、すごく安心するんだ。
心地良くて、なんだか意識が遠くなってきた...。


「明宏、もう俺死ぬかも...。」


「ワイン一杯飲んだくらいで死にませんよ。」


明宏の呆れたような声が聞こえて、それからまだ何か言っていたような気がするけど、それを聞くことはできなかった。

俺が覚えているのは、そこまでだから。

死ぬのならこのまま明宏の腕の中で死にたいなあ、なんて。

そんなことを思う俺は相当頭がやられている。
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