教壇と愛の狭間で～誰も知らない物語～

空にネオンの輝きが映えるくらい暗くなっても､見つからない｡


「あきらめようかな」


呟いたその時だった｡


「いた!」


あたしはその人の元へ走って声をかける｡


「森田さん…ですね?」


彼女は微笑んで言った｡

「そうよ」


「で?話っていうのは?」


そう言って電灯の光が差し込む青いベンチに腰をかけるのは森田さん｡


先生の､奥さん｡


「私は森田沙奈(さな)｡桜華風女子高で教育実習をしている森田湊典の妻よ｡あなたは?」


「申し遅れました｡青葉水香と申します」


「そう｡あなたのその制服､桜華風女子高のものよね｡あの学校はお嬢様学校として有名だものね」


「あ､どうも…」


あたしは少し恐縮した｡


「私が慶凛(けいりん)女学院高生だった頃から憧れていたわ｡もっとも､その時はそちらは共学だったわね」


「いえいえ､とんでもありません」


慶凛女学院っていったら名門中の名門じゃない!


それに構わずに彼女は言う｡


「で､本題だけど｡わざわざ私に話ってことはおおかた森田のことよね?」


「は､はい」


あたしは戸惑いながらも答える｡


「「先生と別れたくないから彼を社長にしないでくれ」みたいな?」


そう言って彼女は不敵な笑みを浮かべた｡


「!」