教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「大丈夫か?」


「はい。また単なる寝不足です」


あたしは苦笑してみせる。


「もしかして俺のせいじゃないか?」


「うーん」


当たってるけど先生のことを考えると安易に頷けない。


「俺、お前に迷惑かけてばかりだよな」


「先生、どうしてそんなに自分を追い込むんですか?誰にだって過ちはあるんですよ」


「水香…」


「過ち、苦しみ、つらさ…そういった障害を乗り越えるからこそ、人は強く優しくなるんです」


「なんか立場、逆だな」


先生は子供のような顔でクスクス笑う。


「本当ですね」


あたしも自然と笑顔になった。


「水香、こんな俺だけど、誓ってくれるか?生まれ変わったら、またお前に逢いたい」


急ではあるけど、なんだかドラマチックな展開に、あたしは涙が出そうだった。


「はい、先生。あたし、誓います」


あたし達は指切りをし、抱擁を交わした。


2つのブルガリの香りが交錯して切なさが広がり、胸がつまる。


「なぁ、水香」


「はい?」


「キスしてもいいか?」


「はい」


お互いの唇がそっと触れる。


キーンコーンカーンコーン。


「行くか。朝のホームルームの時間だ」


「はい」


あたしは先生の手を握った。


今日もまた1日が始まろうとしていた。
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