コンプレックス*ラヴァー
何てことはない。
さっきと一緒。
さっきのことがあるから、反射的に動いてしまっただけ。
ただ、取ってあげただけ……なんだけど。
一瞬だけ触れた唇に、指先が異様に反応してしまったのも事実で……
今日の俺は、本当にどうかしてる。……って、ん?
ふと我に返ってみれば、
花びらを指に摘んだままの俺を、大きな瞳が見つめていた。
近い距離で、さらには軽く上目遣いで。
とにかくじーっと。
ただ、黙って。
「……え?何?」
もしかして、嫌だった?
さすがにマズかったかな?
表情からは読み取れない。
「ごめん、俺…え?」
花びらを振り払って、慌てて距離を取ろうとした。
そんな俺の腕を掴んでぐいっと引き寄せて……
彼女は、さっきよりも近い位置から俺の顔を覗き込んできた。
……何?
「……ねぇ?先輩、」
戸惑う俺とは対象的に、ゆっくりと口を開いた彼女。
「ここはキスするタイミングですよ?」