コンプレックス*ラヴァー



何てことはない。


さっきと一緒。

さっきのことがあるから、反射的に動いてしまっただけ。

ただ、取ってあげただけ……なんだけど。


一瞬だけ触れた唇に、指先が異様に反応してしまったのも事実で……


今日の俺は、本当にどうかしてる。……って、ん?



ふと我に返ってみれば、
花びらを指に摘んだままの俺を、大きな瞳が見つめていた。


近い距離で、さらには軽く上目遣いで。


とにかくじーっと。
ただ、黙って。



「……え?何?」



もしかして、嫌だった?


さすがにマズかったかな?


表情からは読み取れない。



「ごめん、俺…え?」



花びらを振り払って、慌てて距離を取ろうとした。

そんな俺の腕を掴んでぐいっと引き寄せて……

彼女は、さっきよりも近い位置から俺の顔を覗き込んできた。


……何?



「……ねぇ?先輩、」



戸惑う俺とは対象的に、ゆっくりと口を開いた彼女。



「ここはキスするタイミングですよ?」


< 33 / 87 >

この作品をシェア

pagetop