コンプレックス*ラヴァー
カズヤの言葉に、教室の入り口へと視線を向ければ……
「新ちゃんっ!」
俺を見つけて、満面の笑みで手を振る女の子。
その愛らしい姿に、周囲の男子生徒の目は釘付けだって言うのに。
まったく気にすることなく、瞳はまっすぐに俺を捉えていて……
「帰ろ?」
窺うように、ちょこんと首を傾げた。
……っ。
見慣れたはずなのに……
相変わらず、心臓に悪い。
「やーっ、くるみちゃんってばやっぱり今日も可愛いねぇ。」
「向こうもピンクオーラ大放出中だからな。」
「“新ちゃん”だもんねぇ。俺以外にそう呼ぶ人間が現れるとはねぇ…。軽くショックだわ。」
相変わらずな2人は気にしないことにして……
「じゃあ、俺帰るわ。」
カバンを掴んで、慌てて椅子から立ち上がった。
早く、ここから連れ出さないと。
あれじゃ、いい“見せ物”だ。
見られたくないし、見せたくない。
だって……
「お待たせ、くるみ」
俺の彼女、なんだから。