全部、私からだった。
長い両足の上に跨って、りっくんと向き合う。両肩に手を添えて真っ直ぐ睨みつければ、

「多恵? 何やってんだよ? お前、今日おかしい。ああ、おかしいのはいつもか」

りっくんはそう言って笑った。



冗談で誤魔化そうとしたって無駄なんだから。

酷いよ、あんな生殺し。



「キスしてって言ってるのに、どうしてしてくれないの? りっくん、目、つぶって」

言って、ガシとその顔を両手で挟んで固定した。



「多恵?」

「つぶって……」

泣きそうになりながら訴えると、りっくんはしぶしぶ瞼を落とした。


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