お前に全て、奪われた。 Ⅰ







ヒロくんが酷い怪我をして私に治療を頼んでくるのは初めての事では無かった。




ヒロくんは何も言わないけどきっと『虐待』を受けてるんだと思う。




だからヒロくんは帰る時、必ず嫌がるし何度かここに泊まって行った事もある。




確信はまだ出来ないけどあんなに可愛いくてまだ5歳の幼いヒロくんに暴力を振るうなんて…


……でもそれを止める事の出来ない私はとても惨めだった。





「えっと、確かここらへんに…」





物置の中から取り出したのは何年も使っていない救急箱。





「お待たせしました。腕出して下さいね。」





素直に腕捲りをした状態で差し出された細い腕

なるべく怪我のある箇所は触らない様に触れる。





「少し冷たいけど頑張って我慢して下さいね。」


「う…んっ…」






そっと腕全体を包む様に湿布を貼った。





「お姉ちゃんっ!魔法してっ!」





魔法…?

何の事だろうと一瞬、固まる…





「ぁあ…、忘れてました。」





でも、その魔法を直ぐに思い出した。






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