tearless【連載中】
だんだんと速度が上がり、柔らかい風が私の髪を靡かせる。

流れていく景色を眺めながら、何となく璃琥の背中に体を預けた。

ドクン、ドクンと規則的に動く鼓動が私の体全体に伝わる。



『辛い?』



背中からダイレクトに伝わる璃琥の声。

今日は気持ち悪い位に優しい…。



「こうしててもいい?」

『楽なら…』



何でこんな事言ったのか自分でもよく分からない。

でも、何となく落ち着いたから…。



『熱あった方が素直で可愛げあんな、葵は』



意地悪く言う璃琥の言葉に“うるさい”と返したけど、本当はすごく嬉しかったんだ。

ドキドキして顔が火照り、熱の所為なのか訳が分からなくなる位…。



「そこ右…」

『ん』



もうすぐ私の住むマンションに着く。

茶色いタイルが貼られた11階建ての見慣れた建物。



「ここでいいよ」



その言葉に“ギー”と不快な音をたてながら止まる自転車に、自然と体は離れ璃琥と距離が出来る。

寂しさを感じながら私は荷台から降りた。


 
< 56 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop