出会う前のキミに逢いたくて
自然と紙面に目がいく。


「いよいよ運命の決勝!」という見出しが飛び込んだ。


マスコミは決勝戦を大々的に盛り上げていた。


中野くんと原田くんの宿命の対決。


二人は名門高校のエースと控え投手の間柄。


そんな二人が大学生となり、それぞれのチームのエースとなって、互いの看板を背負って投げ合う。


いかにもマスコミが飛びつきそうなストーリーだった。


かたや全国区の知名度を誇る中野くん。


その中野くんの影に隠れるような存在だった原田くん。


大多数のファンは原田くんに肩入れしていた。


判官びいきってやつ。


陽の存在である中野くんを陰の存在だった原田くんが超えられるか?


というのがマスコミ一押しの見どころでやたらとそのことを強調していた。


けど、オレ的には、原田くんに勝ってもらいたくない。


冗談じゃない。


中野くんと原田くんが野球のライバルなら、オレと原田くんは恋のライバル。


一ヵ月後、マヤの無垢な身体をむさぼる憎き存在なのだから。


< 129 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop