出会う前のキミに逢いたくて
不意に前田くんの言葉がよみがえった。


「今は中野のほうがすごいけど、いつかおまえがあいつと肩を並べるときがくる。
そのときがおまえらの本当の勝負なんだ」


どっちが上か、勝敗を決するとき。


それが今なんだ。


今が絶好のチャンス。


今しかチャンスは残されてないのかもしれない。


9回表。


マサキのチームの攻撃は1番からの好打順だった。
にもかかわらず、3人で呆気なく終わってしまった。


中野くんは絶好調だ。
衰えるどころか、イニングを重ねるごとに上向いてる。


やっぱりすごいよ、この人。


中野くんのチームの攻撃が始まった。


もしも点を失えば試合は終わってしまう。


敗戦という形で。


同時に、マサキの野球人生も一旦幕をおろすことになる。


中野くんに勝つことなく。


マサキは緊張感に満ちた表情でマウンドへ小走りに向かった。


ものすごいプレッシャーと闘ってるんだと思う。


土をならす繊細な佇まいを見てるだけで、また胸が熱くなった。


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