出会う前のキミに逢いたくて
ふだんはマスターとアルバイト1人、計2人で切り盛りしているようだ。

でも今日に限ってマスター1人きり。

なぜなら、マヤが来てないからだ。

野太い声の男が帰ったあと、マヤは部屋から一歩も外へ出てなかった。

マヤの涙の理由が知りたきてたまらない。

オレは居ても立ってもいられなかった。

なんといっても野太い男までもが、もらい泣きしたんだ。

ふつうじゃねえよ。

なにかとんでもなく大きなことがマヤの周りで起きてることは間違いない。

そのあと、オレはマヤと出会ってからの3ヶ月の出来事を辿ってみた。

わずか1年前にマヤの身に悲しい事件が起きているのであれば、オレはマヤからその話を聞いているはずじゃないだろうか。

しかし、まったく心当たりがなかった。

それを思うと、淋しい気持ちでいっぱいになった。

オレとマヤは恋人同士のはずだ。
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