出会う前のキミに逢いたくて

ニアミス

村上さんと別れたあと、大急ぎで本屋さんに走った。

早歩きしたのはこの時代に来て初めてだろう。

運動不足が災いし、すぐに息があがってしまう。

駅前にある、この街で一番の大型書店に向かった。

目指すは一階フロア奥にあるスポーツコーナーだ。

スポーツコーナーに辿り着くには女性ファッション誌の棚を通過しなきゃならない。

そこにはこれでもかと学校帰りの女子高生たちがたむろしている。

彼女たちの背中をすり抜けてスポーツコーナーに急いだ。

辺り一面から、シャンプーだかリンスだかコンディショナーだかの匂い、そして香水の香りが漂う。

そこを通過し、棚の前で目当ての雑誌に手を伸ばした。

表紙は六大学野球のスーパースター・中野くんが載っている。

勝利した瞬間、マウンド上でガッツポーズする写真だ。

緊張から解放され、厳しい顔から柔和な表情に変わった瞬間をとらえた秀逸な一枚だった。

プロ顔負けのオーラを放っている。

モデルでも通るかもしれない。

パラパラと中をめくる。

試合のレポートや中野くんをはじめとする有望選手のインタビューが掲載されていた。
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