出会う前のキミに逢いたくて
中学、高校と野球の名門校に進む。

そして、高校生のとき、あの中野くんと出会う。

ずっとエースに君臨し続けた原田くんの前に、初めて自分よりも速い球を投げる究極のライバルが現れたのだそうだ。

中野くんの話題は避けるつもりでいた。

同じポジションを争った宿敵。

結果、中野くんに軍配は上がり、有名リーグのスターにのぼりつめる。

光り輝く彼を原田くんがやっかんでないはずがない。

ヘソを曲げ、口をつぐまれたら元も子もない。

そう思っていた。

ところが、全部オレの取り越し苦労だった。

原田くんの口から中野くんの話がポンポンと飛び出す。

絶賛の雨あられ。

「あいつは天才の中の天才なんですよ」

ライバルの活躍を心から喜ぶ人間の顔だった。

心の奥底に悪意を隠しもってるような、裏表のある表情じゃ決してない。
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