出会う前のキミに逢いたくて
バイト先には10時前には入らなきゃいけない。

歯磨きをし、髪の毛をテキトーに直すと、9時40分に自宅を飛び出した。

アパートの門を出る。

向かいのマンションの一階では、リフォーム工事がまだ続いていた。

もうしばらく続きそうだ。

ドリルの衝撃が地面を揺らしている。

大きな通りを目指して路地を何度か折れた。

民家の塀でひなたぼっこする野良猫と目が合った。

けど、今朝は笑顔を返す気になれなかった。

手を振ることも億劫。

申し訳ないけど。

喫茶店までは徒歩7、8分といったところだった。

いつもならば、アルバイトが終わったら、『今日』という1日をどんな風に過ごそうかと、じっくりたっぷり吟味しながら歩くんだけどなー。
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