蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



───多分、絢乃は全く気付いていないだろう。

祖母の晩酌に付き合っているだけと思っているはずだ。

慧は嘆息し、ぐっと唇を噛みしめた。

数年前からは酒に加えて、入浴の後に睡眠薬を飲むようにしている。

酒だけでは、確実ではないからだ。


慧は白んでくる空を見上げ、苦笑した。

・・・年二回の苦行。

初枝に会うのは、慧も楽しみにしている。

けれど、これだけは・・・・どうにも、辛い。


時計を見ると・・・まだ、5:00だ。

慧は立ち上がり、縁側を抜けて隣の物置部屋に入った。

・・・確か、この部屋には本棚があったはずだ。

本でも読みながら時間を潰そうと思い、慧は本棚の前へと歩み寄った。

本棚には母の昌美と、その妹の時世が残した本が並んでいる。

もうかなり昔の本なので、どれも背表紙が色褪せているが・・・。


「・・・ん?」


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