蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



絢乃は典型的な理系女で、技術的なことにその神経のほとんどを日々費やしているせいか、考えていることがすぐに顔に出る。

だからなのか、絢乃からは女の生々しさやどす黒さをあまり感じない。

卓海の周りに群がっている、綺麗な面立ちで美しく着飾っているが、心の中は何を考えているのかわからない女達とは全く違う。


「・・・」


なぜ、こんなに絢乃のことが気になるのか。

絢乃は自分が楽しむための道具のひとつであり、おもちゃの一つであるという認識に変わりはない。

けれどこんなに、『手にしっくりする感じ』がする道具は初めてだ。

この道具に一度慣れてしまったら、他の道具を使えなくなるかもしれない。

・・・そんな思いすら頭をよぎる。


「何でも一つ言うことを聞く、か・・・」


なぜあんな交換条件を出したのか、自分でもよくわからない。

ただの道具に、たかがあの程度の調査だけであんな交換条件を出しはしないだろう。

少なくとも、これまでの卓海ならば。

───自分の心が、よくわからない。

卓海はひとつ息をつき、ゆっくりと椅子から立ち上がった。


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