蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




慧は踵を返し、雑貨の山の中をガサガサと探り出した。

その様子を、絢乃は唖然と見つめていた。

・・・布の切れ端って・・・。

やがて慧は顔を上げ、絢乃に何やら黒いものを突き付けた。


「ハイ、これ。これを上に着れば安心だよ?」

「・・・」


絢乃は渡されたラッシュガードを手にし、はぁと息をついた。

・・・まあ確かに、上に服を着るよりはこの方が動きやすいかもしれない。

ラッシュガードは男物なので少々大きめだが、大きい分にはいいだろう。

しかし慧はいつ、ラッシュガードを買ったのだろうか。

昔の彼女と海にでも行ったことがあるのだろうか。

気になると言えば気になるが、今は旅行の準備をするのが先だ。


「・・・慧兄、靴もちゃんとしたのを履いていってよ? サンダルだけじゃダメだからね?」

「えー・・・」

「帽子もちゃんと持ってくこと! 慧兄の髪は紫外線に弱いんだから、忘れないようにね!」


・・・なんだかどちらが年上かわからない。

毎度のことではあるが・・・。

絢乃は思いつくまま次々と慧に言いながら、自分の荷物の整理を始めた・・・。


< 226 / 438 >

この作品をシェア

pagetop