蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




「そうなりますね」

「・・・しかし、輸入商品は物によってはロジを経由せずに直接店舗に届くものもあります。九州の港に上がった商品は、たいてい直送になります」

「直送品、ですか・・・」

「直送品の場合は物流システムで保持している着荷予定のデータを使うことができません。となると、日別予算を出す為には、貿易システムからデータを送る必要があります」


雅人の隣で、卓海が思慮深げに腕を組みながら言う。

その、真剣で理知的な表情。

───仕事モードの卓海からは、あの鬼っぷりはまるで想像できない。

絢乃は卓海の言葉を聞きながら、手元の資料に視線を落とした。

ロジから商品を出荷した時点では、いつ商品が店舗に届くのかはわからない。

一応、店舗ごとに『届くのに何日かかるか』というデータは持っているので、その日数をプラスすれば到着予定日の予想はつくのだが・・・。

しかしそのデータは物流システムで保持しており、貿易システムでは保持していない。

かわりに貿易システムでは、商品ごとに『輸入にかかる日数』というデータを保持している。

それらの日数データは、物流用語では『リードタイム』と呼ばれている。



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