蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



雅人の言葉に、絢乃はこくりと頷いた。

・・・もう貿易システムの改訂は終わっているし、今は急ぎの仕事はない。

それにしても、やはり雅人は頭の回転が速い。

ひとつ聞くと、それに関連することを頭の中でぱぱっと弾き出すのだろう。

それは経験や知識によるところが大きいのだろうが・・・。

自分も5年経ったら、雅人のように考えることができるようになるだろうか。

と絢乃が思った時、アナウンスが聞こえた。


「・・・お客様に申し上げます。ただ今、恵比寿駅で人身事故が発生したとの情報が入りました」


絢乃ははっと顔を上げた。

周りの乗客の間にも、少しざわついたような空気が広がる。

見ると、雅人も少し驚いたような表情で入り口近くの電光表示を見ている。


「・・・よって、この電車は新宿駅で停車いたします。お客様にはご迷惑をおかけ致しますが、電車再開まで少々お待ちください」


人身事故だと少々では済まないような気が・・・。

と思ったのは雅人も同じだったらしく、二人は顔を見合わせた。



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