蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・はい、アヤ。回復ハーブ」
「ありがと、慧兄」
「それにしても、このハーブ凄いよね。おれとしては、ゾンビよりこのハーブの方が気になるな」
慧は画面を見ながらまじまじと言う。
絢乃は画面のキャラを操作し、もらった回復ハーブで体力を回復させながら首を傾げた。
「え? なんで?」
「だって、吐血してた奴が草一本食べただけでピンピンになるんだよ? ゾンビもやばいけど、この草の存在の方が人類的にはマズくない?」
「・・・」
そんなことを考えるのは慧兄だけだよ、と絢乃は思わず言いかけ、慌てて口を噤んだ。
慧は昔から頭が良く、そのせいか、考えることも常人とは少し違う。
前にマリオをしていたときも、慧はなぜかクッパの城のことを気にしていた。
『これだけ城を持ってて、これだけ手下がいたら、経費もかなり嵩むよな・・・』
『・・・はぁ』
『城の減価償却も大変だろうな。使うのはマリオが来た日だけって考えると、初年度に99%償却だろうな。マリオが来た年は大赤字だろうよ』
───いや、そんなことを気にしていたら、悪の親玉なんていう職業は務まらないと思う。
と絢乃は内心で思ったが、口には出さずにおいた。
口に出したら最後、クッパ城の減価償却について延々と話をされることは目に見えているからだ。