蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



絢乃はとっさに横に避けようとした。

しかしその肩を、卓海の手が掴む。

・・・その、力の強さ。

はっと顔を上げた絢乃の顔を、卓海はいつもの黒い笑みでじーっと見つめる。


「昨日は確かセミナーだったよな。しかも電車は2時間ストップ。その間、軍曹とどっかに行ってたわけ?」

「・・・」


なぜこの男はこんなに勘がいいのだろう。

・・・ダメだ、隠し通せる気がしない。

絢乃は脱力し、昨日のことをポツポツと説明した。

・・・別にやましいことはないし。

『課長命令』でもあったし。

と順を追って話していった絢乃だったが、目の前の卓海の顔がしだいに凶悪さを増していくことに気付き、内心で息を飲んだ。

・・・なんか、とても、嫌な予感がする。

そしてその予感は残念なことに的中した。


< 330 / 438 >

この作品をシェア

pagetop