蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



絢乃は慧に背を抱かれたまま、歩き出した。

・・・なんだか本当にカップルみたいだ。

慧は見た目は細いのだが、体格はわりとしっかりしている。

着痩せする体質、とでも言うのだろうか。

絢乃はふと、慰労会の時の会話を思い出した。


『こいつが大学の時に付き合ってたのは、角倉沙耶。あのインテリ美人女優だよ』


角倉沙耶・・・。

この頃テレビで見ない日はない、バラエティにもCMにも引っ張りだこの女優だ。

知的だが女としての色気さも兼ね備えた、まさに『才色兼備』の女性。

慧の元カノが彼女だと聞いたときは驚いたが、今にして思えば、なるほどと思う。

慧の美貌、そして頭脳に釣り合うのは彼女ぐらいだろう。

・・・しかし。


なぜ、二人は別れたのか。

片や女優、片や弁護士資格を持つ最高学府主席。

肩書きとしては十分釣り合うような気がするのだが・・・。

・・・まさか。

絢乃は内心で息を飲んだ。

キャリア官僚の道を諦めて個人事業主になったことが、二人の仲を裂いたのだろうか。

となると、原因は自分にあることになる。


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