蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




「・・・加納。ひとつ聞きたい」

「何でしょうか?」

「君と慧君は昔からの知り合いと言っていたな。君は知っていたのか? 慧君が秋月の実の兄ではないということを」


雅人の言葉に。

卓海は一瞬、自分の頭の中が真っ白になるのを感じた。

───実の兄では、ない?

背筋を強張らせた卓海の前で、雅人は続けて言う。


「秋月は、彼を実の兄のように思っていると言っていたが・・・。まあ従兄であれば、近い関係ではあるが・・・」

「ちょっと待ってください。・・・従兄? 慧は従兄なんですか?」

「・・・? 加納、君は知らなかったのか?」


雅人は驚いたように言う。

卓海は血の気が引いていくのを感じた。

・・・あの、慧の言葉。


『本気になることが許されない場合もある』


───あの言葉の意味を。

卓海は瞬間的に理解した。


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