蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



あの頃・・・

友人と彼氏に裏切られたショックで泣き暮らしていた絢乃を、慧は何も言わずに、優しく見守ってくれた。

美味しい食事を用意してくれたり、気晴らしにと買い物や映画、テーマパークに連れて行ってくれたり・・・

そのおかげで、絢乃は失恋のショックからしだいに立ち直ることができた。

やはり、慧には感謝してもしきれない。


ちなみに、慧にも大学の頃には彼女がいた。

今はいないようではあるが、数年前まではたまに女物の香水の匂いをさせて帰ってくることもあった。

慧は香水は使わないので、香水の香りがするとすぐにわかるのだが・・・

しかし慧に聞いても、頑として話そうとはしない。

そういう時の慧はとても頑固で、絢乃が何と言っても絶対に口を割ることはない。


「・・・どしたの、アヤ? ぼーっとして」

「あ、ううん、何でもない」


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