恋愛温度(番外編も完結しました)
「いただきます。」

そう言って、貰ったキャンディを口に運んだ。

ちょっと埃っぽいような甘さが、

穴のあいた心をコ-ティングするように広がる。

ポロッ…

まるで憑き物が落ちるように涙がこぼれ落ちた。


「あらあら、大丈夫?…あなた、心が疲れているの?

 なにか辛いことでもあった?」

そう言いながら、

ミニタオルで涙をそっと抑えてくれた。


「え?あの…」


「私も2ヶ月前に主人を亡くしてね、

 甘いものを口に入れるたびに涙が出てね…

 大丈夫よ、どんなに辛くても人間てだんだん適応できるようになるから。

 私もやっと、主人との思い出の場所を片付けられそうなので、

 軽井沢に行くのよ。」


「思い出ですか?」


「そう、主人軽井沢の別荘大好きでね、休みごとに篭ってたのよ。

 私も、娘が小さい時は一緒に過ごしたけれど、

 娘が大きくなるに従って、なんだかんだ理由をつけて、

 行かなくなって、それでも主人は一人で来てたの。

 今思えば、あの人ちょっと意地になってたかも?

 もう少し一緒にに来て過ごしてあげればよかったと思うわ。」
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