夏の日差しと狼のいろ。


だいぶ先まで行ったころ、
ようやくウルーが

ぴたりと足を止めた。


「…何か、わかりましたか?」



アルはすぐ後ろに
ついて止まり、尋ねた。



正直、もうアルには
ニオイはわからない。


しかしウルーはわかったようで
真剣な眼差しで

こちらを振り向いた。


「どうやら、
ここに流れついたみたいだ

…それと」




ウルーはいったん口をつぐみ、

また開いた。



「…別の、狼のニオイがする…
知ってる気がするんだが…」



アルも鼻を近づけ
ニオイをかいでみた。


「本当ですね。
しかも
どこの族でもないみたいです」




アルの言葉に、
ウルーもこくりと頷く。


きっと、ツキは
さらわれたのか、助けられたのかは
よくわからないけれど


その狼に連れて行かれたのが
わかった。




「あとを、追いましょう。
…と、言っても…もう簡単ですね」



そう、簡単だ。




…この先には、
雪が積もっていて一面真っ白で


足跡が、くっきりと
残っていたからだ。




…これ以上寒いなんて
信じられませんけどね…



アルは勇気を出して
雪に、足を一歩踏み出した。




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