神様修行はじめます! 其の二
彼の後について屋敷に向かいながら、あたしは近寄ってきた牛のお尻をぺしんと叩いた。


そーよね。

『あたし達ふたりきり』とかってウツトリしてたけどさ。

周囲を見渡せば、牛やらニワトリやらがいっぱいいるじゃん。


家畜が見守る中で告白しちゃったよ、あたし。


門川君は、あれは告白だとは気付いてないけどね。


「天内君、先に部屋に戻っていてくれ」

「? 門川くんは?」

「岩さんのお父上に、用があるんだ」

「当主さんに?」


今回の件を報告するのかな?

今後の事も相談しないとだめだろうし。



夢見る気分から、一気に現実に引き戻される。

あたし達は、今かなり難しい現状なんだ。

この局面を突破しなければならない。なんとしてでも。


牛の見守る中、告白して浮かれてる場合じゃない。


歩いていく門川君の背中を見送りながら、気持ちを引き締める。

そしてまた、周囲を見渡す。


生き物がのんびりと休んでいる。

自然が穏やかに息づいている。

人々が大切なものを育んでいる。


「大丈夫だよ。ちゃんと守るからね」


あたしは、再び牛のお尻をぺちんと叩いた。

安心して。大事な物はきっと守って見せるからね。
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