神様修行はじめます! 其の二
上機嫌のお岩さんと、プンッと膨れるあたしを見比べながら、セバスチャンさんが頭を上げた。


「お二人とも、そろそろお部屋でお休みになられてはいかがでしょう?」

「そうね。少し休みますわ」


お岩さんが、あたしの所まで駆け寄ってくる。


「アマンダも、戻ってお休みになってね。軽く仮眠をとると良いですわ」

「うん、そうするよ。でも・・・」

「なんですの?」

「お岩さんも、門川君と一緒にあたし達と休まない?」

「・・・・・・・」


お岩さんは軽く首を傾げて、あたしをじっと見つめた。

そして、にこりと微笑んだ。


「ありがとう。でも、わたくしは権田原当主の娘です」

「・・・・・」

「父と、セバスチャンと、権田原の民と共に過ごしますわ」


それじゃあ、また後で。

そう言ってお岩さんは手を振った。

そしてドレスの裾を引きずりながら歩いていく。


あたしは、その後姿を見送りながら思った。

お岩さんは、えらいって。


こんな特別な時、あたしだったら何はさておき、好きな人と一緒にいたいと思う。

女の子なら、きっとみんなそうだ。

でもお岩さんは、個人の感情よりも自分の公の立場を優先してる。
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