幸せになろう
第22話 ラストエンジェル~ふたりをつなぐもの
 いつもと同じ日々、変わらない生活、そこには、独り暮らしの自分がいる。
慎一がエレーナやさやかと別れてから月日が経った。この生活にも慣れた。
街を歩いていて、見覚えのある後ろ姿に出会うことがある。
慎一はつい眼で追い、もしかしたらと思ってしまう。だがそれは、エレーナではない。
本当にエレーナもさやかもいなくなってしまった。
天上界からの来客も、まるで嘘のように来なくなった。
これで、天上界とのつながりも無くなったのかと、慎一は寂しく思う。
エレーナがいたとき、慎一の周りにはたくさんの人がいた。いつも、誰かがそばにいて、
独りになることなどなかった。
今は、誰一人訪れる者はいない。
夏穂や綾香ですら、最近は来なくなった。
ふたりとも学校が忙しいのか、慎一の相手などしている暇は無いのだろう。
 その時、白い天使服、金髪の長い髪とすれ違った。ほんの一瞬だった。
あれ? 今すれ違ったのはもしかして……
「エレーナじゃないか!」
だが、以前と様子が違う。慎一の姿を見ても、表情ひとつ変えない。
「あのう、どなたですか?」
「エレーナ、ほら俺だよ。いつも一緒だったじゃないか」
「あのう、どうして私のこと知っているんですか?」
慎一は、一生懸命話掛けた。しかし、エレーナの反応は良くない。
もしかして、俺の事を覚えていないのか?
慎一は焦った。その時、
「あっ、」
見知らぬ男にエレーナが反応した。
「行こうか」
男が、エレーナに声を掛けた。
「はい」
この人がエレーナの新しい契約者なのだろうか?
その契約者らしき男が慎一に気づき、エレーナに訪ねた。
「誰? 君の知り合い?」
「いいえ、知らない人です」
そんな……知らない人だなんて……
慎一は、ショックだった。
以前、別れる前にエレーナが言った言葉を思い出した。
ずっと慎一さんのそばにいたい、エレーナは確かにそう言ったはずなのに……
なぜで覚えていないのだろう?
「エレーナは、お前の事が忘れられず、天使としての役目を果たせなくなった。
だから、エレーナからお前の記憶を全て消したんだ」
「その声は、ジェシー・クリスタル!」
慎一が振り返るとジェシーが空から降りてきた。
「そんなバカな。でも、ひとつぐらいは、何か覚えているだろう?」
「いいや、何も覚えていない。我々の役目は、ひとりでも多くの不幸な人を幸せにすることだ。
お前も早く忘れるんだな」
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