幸せになろう
「天上界って?」
「この地球からはるか彼方、異次元の世界です。
私達天使は、召喚魔法によって呼び出され人間界に来ます。
そして、自分を召喚した人と契約し、願い事を叶えなければならないのです」
慎一は妙な事を言う女だなと思いながらも、話だけは聞くことにした。 
「だったら黒崎との契約を打ち切ればいいじゃないか」
「天使には、役目を果たす義務があるため、こちらから相手の同意無しに、
契約を解除することは出来ません。黒崎は契約解除に応じませんでした。
私達天使は、自分を召喚した者を契約者とし、相手を選ぶことは出来ません」
「だったらどうすれば、黒崎との契約を解除出来る? 何か君のために協力出来ることはないか?」
「一応方法はあります。でもそれは、危険です」
協力を申し出る慎一に、天使は躊躇った。
「黒崎のことか?でも、今はそんな事を言っている場合じゃないだろ?
まずは、君を助けることが先だ。君を救う方法があるなら教えてくれ。どんな事でもする」
「では、私と仮契約をして下さい。そして、私を黒崎一味から助けたいと願えば開放されます」
「じゃあ黒埼との契約はどうなるの?」
「たとえ誰かと契約したままでも新たな契約は可能です。
その場合、より新しい契約が優先され、古い方は自動的に消滅します」
「よし、それでいこう」
その場で決断する慎一。
「但し、これは君を救うための一時的な契約だ。君が開放されたら契約は終了だ。それでいい?」
「分かりました」
「じゃあ今のうちに契約を……」
何だか急に外が騒がしくなってきた。慎一は窓の外を見た。
いかにもヤクザ風の男達があたりの様子をうかがっている。
「大変、黒埼の追っ手です。私を捕まえに来たのです」
「大丈夫、ここに居れば見つかりはしないよ」
ドンドンドン! 黒崎が激しく玄関の扉をたたく音。
「ここを開けろ! ここに天使がいることは分かっているんだ!」
「君はここに隠れていて。俺が出る」
部屋の物陰に天使を隠し、恐る々玄関を開ける慎一。
「うちは俺一人です。他に誰もいません」
「じゃあこれは何だ?」
そう言って黒埼は白く光輝く羽のかけらを慎一に突きつけた。それは天使の羽と同じ物だった。
「天使の羽だ。お宅の玄関先にたくさん落ちていた。
これがあるということは、奴がここに来たという証拠だ。隠すとためにならんぞ!」
黒埼は声を荒らげながら天使を差し出すよう要求した。


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