日常の奇跡
日常
彼女はふと、考えた。


いつもの目覚め。

いつもの電車。

いつものバス。

いつもの街中。

いつもの学校。



そういった、いつもの日常。




その現実に、人生の中で幾度自

分はそれを後悔するのだろうか。

奇跡なんてものがあるならぜひ

一度、お目にかかりたい、と自

棄になる。

そう考えるのは己ばかりではな

いだろう。

毎朝、人で埋め尽くされている

電車で押し潰された経験のある

者ならば、一度は思うことだ。

その空間から遁走したいと考え

ても、結局それを実現できる責

任感のある人間は実に少ない。

数多くの者たちが、非難や嫌悪

を日々繰り返しているのだ。



彼女、春日井章子にしてもそれ

は同じで、そんな事を考えてい

る事自体が、いやに自分がこの

現実に溶け込んでいるのだと自

覚させていた。

だが時に、日常は奇跡をぶら下

げ思っても見ない方向性を持っ

て変化をしていく。

それは誰が望んだことなのか。

もしかしたら全人類の上に平等

に与えられているチャンスなの

かもしれない。

それをチャンスと受け取るか、

見知らぬ振りをして通り過ぎる

かは当人しだいだ。

章子の場合、前者であった。

もしかしたら今までの彼女なら

ば、何食わぬ顔で後者を選択し

ていたかもしれない。

だが人間とは、学びそして成長

する生き物だ。



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