夏の月夜と狐のいろ。



首に重みを感じながら、シアンはゆっくり目を開いた。


だが、あたりは薄暗く目を開いてみても
ほとんど何も見えなかった。


動くたびにジャラ、と金属的な音と
首と足にこすれる痛みを感じた。


目線をおろすと首には大きな首輪がついていて、
足には鉄の足枷がついている。



「なにこれ…?」


シアンは、小さく呟いた。

すると、その呟きに答えるように少しかすれた
小さな声がきこえた。


「ここは物見小屋だよ。異端の生き物をあつめて
みせものにしたりするところなんだって。」



はっとシアンが声のしたほうを向くと
こちらをみる疲れきった茶色っぽい琥珀色の瞳があった。


だんだん目がなれて、景色がみえはじめた。



どうやら自分は牢屋にいれられているらしく
声の主は隣の牢屋にいるらしい。


そこにいたのは、茶色い長い髪の少女だった。


少女も同じように首に鎖をつけられていて
シアンよりもぼろぼろだった。



そして、その少女の頭には茶色い耳が鎮座していて
腰のあたりからは獣のものと思われる尻尾がある。



「……あなたも、人間に化けてるの?」



シアンは、そう訊いた。


だが、少女は首を振った。



< 30 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop