夏の月夜と狐のいろ。



紹介がおわり、静かになったのを確認して
ラシッドが口を開いた。


「終わったか?まぁ色々疑問はあるだろうが今のお前に説明しても何もわからないだろうよ。

お父様、とやらに聞いたくらいの知識しかないんだろう」



シアンは、頷いた。


お父様はいつかのためだといっていくらか人間界のことを教えてくれた。


だが、シアンが受けた知識はたかが知れている。



ラシッドは口元をにっと歪めて手で図書館の本を指しながら言う。



「俺はお前に用事がある。
だが知識のないお前はその俺の用事を満たせない。」



そういって一番はしの一冊の本を
シアンに手渡した。



「ここで一年間、図書室にある本を読みながら過ごしてもらう。

知識をつけるのに充分な情報と量がある。
部屋はこの図書室の横にあるから好きに使え。」



シアンは驚いて図書室をみわたした。


ここの本を、すべて?一年ここで?


だけれど、一年なんてまだまだ長く生きるシアンにとっては瞬く間のことだ。


だから、長いとは感じなかった。


シアンは素直に頷いた。


「うん、わかったわ」


どうやらツキが何かされたときとは状況が違うらしい。


大人しくしていれば何もされなさそうだ。



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