オレンジどうろ




「じゃあ、私が田島さんと豊永さんを平田くんの友だちになるまでの作業を手伝おうか?」


とくに何かあって言ったわけではない。ただ願いを叶えられない代わりに、と思っただけだ。

彼女らは、パァアッ、と表情が明るくなった。


「マジで!?松本あんたっていい奴だな」


今まで君らがしてきたことは、豊永さんの褒め言葉で水に流してあげよう。

というか、友だちになるなんて何かきっかけさえあれば簡単で、しかも相手が平田くんであれば尚更。


「言っておくけど、恋は自分で成就しるもの。私は友だちになるためのシナリオを教えてあげるだけだからね?」


うん、と可愛らしく返事する田島さんたち。私はそれを微笑ましい気持ちで眺め、時間も時間なのでさっ、と教えることにした。


「手作りのお菓子あげればいいよ!」


単純過ぎな答えに田島さんと豊永さんは目を点にした。でも、それ以外平田くんを釣り上げる方法が思い浮かばない。私の中の彼のイメージは、いつも食べてる、ですから。


「それだけ?」

「それだけですとも。じゃあ私教室戻るねっ」


私は呆然と立ち尽くす二人を置いて、教室に戻った。
入った瞬間彩ちゃんが大丈夫だったか、と心配してくれたが、それは心配無用とやつだ。本当に何もなくアドバイスしただけだもの。



***


次の日。

彼女らはマフィンを持って、私のクラスにやってきた。目的はもちろん平田くんだろう。私たちは目が合い、二人とも声をかける勇気がないようだ。


「平田くん、隣のクラスの田島さんと豊永さんに呼ばれてるよ」


なんだろう、と首を傾げながら後ろの扉に向かった。マフィンを差し出され喜ぶ彼と、それを見て喜ぶ彼女たち。何やら楽しげに会話を始めた。どうやら上手くいったようだ。

その様子を見て嬉しい、という気持ちを抱くと同時に胸にチクリ、と痛みを感じた。


私は無意識にその痛みを気付かないふりをした。



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