花火よりも側にいて
夢を語る西田先輩は楽しそうだ。
理科を教えながら、一方ではバスケ部の顧問になれれば最高だと話す。こんなに純粋で綺麗な夢に有里も唇を綻ばせた。


「で、有里は? 夢か何か無いの?」


「あるよ。国語の先生」


「うん、だと思った。点数良くて教え方上手いし。でも、有里だったら生徒を怒りきれなくてキョドってそう」


予想していたことなのか、西田先輩は目尻を下げて笑う。この優しくて少し悪戯な表情が本当に大好きだ。


この表情に西田先輩の性格が表れていて、初めて出会ったあの日からずっと、どきどきと胸を叩く有里の心臓。


「西田先輩、好き。ほんとに大好き……」


きゅっと手を握って見上げる彼女。
「うわ……」と呻いて赤面する彼氏。


「つか、何でそんなに可愛い訳……?」


戸惑ったように言う西田先輩の声音が、有里の左耳をくすぐる。いつもより熱が籠もっていて、有里はぴくりと身体を揺らした。


「せ、先輩っ。中学生に見えるってば!」


「中学生だってそんなに子供じゃねえよ」


口元だけをぎりぎり手で隠し、こちらを見て小さな声で囁き合う中学生が通り過ぎるのを待つ有里。その間も唇は塞がれていて、恥ずかしさのあまり、死にそうだった。


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