花火よりも側にいて
疑いの目で見られていることに気付いた有里は、再び花火にカメラを向ける。視線が頬に突き刺さるが、完全に無視をした。


今度は、少しぶれているが、綺麗な円の花火を撮ることが出来た。すぐに保存すると、次なるショットのために花火を待ち構える。


だが、その手は千秋によって止められた。


「ちょっと、千秋――」


「もう、いいから」


後ろから首に腕を回され、抱きすくめられる。包み込まれるように優しいのに、握った手に見えるようなキスする悪戯な彼氏。


「来年、また来ればいいだろ。
――今度は浴衣で。俺が県外に出てもまた戻ってくるから。絶対、俺からは別れねえよ」


その言葉を聞いた瞬間、有里の目から一筋だけ涙が流れる。いろいろな感情がこみ上げてきて、全身にそれが広がった。


一番好きな声で、一番聞きたい言葉を。


「うん……!」


大好き。大好き。


私、千秋が大好きだよ。


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