猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

「ないわーあれはない」

口をもごもごさせながら、神宮寺が首を振った。

「おまえ、このあと食事だぞ?」

庭園にあるホテル所有の教会で挙式を終え、披露宴までの時間潰しにロビーのラウンジで絢士はコーヒーを、神宮寺はマフィンとミルクティーを頼んでいた。

「甘いものは別腹です、それよりも見てください、あれじゃハチですよ」

神宮寺は先程から彼から見て正面の螺旋階段で写真を撮る新郎新婦のファッションチェックをしている。

「はあ?」

絢士が瞳を向ければ、俺なら絶対に着ないぞっていう黄色…ゴールドか?と黒の二色使いがまぶしいタキシードと揃いのドレスを着た新郎新婦が見えた。

「新郎は勇気があるな」

「室長は、彼女さんがあれ着たいって言ったらどうします?」

「彼女は派手なものを好まないから平気だ」

「えー見た目ゴージャスそうなのに?」

「なんでおまえが知ってるんだ?」

「遠目ですが、この間空港で室長に抱きつくところ見ちゃいましたから」

「抱きついてなんかなかったぞ」

あの時の美桜の笑顔を思い出すと、つい顔が綻んでしまう。

「うわっ…」

神宮寺が飲みかけたミルクティーにむせてゲホゲホと咳をした。

「どうした?」

「室長のその顔はヤバイんですって!男の僕だってドキッとするんですから。女子社員の悲鳴が聞こえてくる様です」

「くだらない、さっさと食え」

「はいはい。あれっ?あの二人は……」

「もうチェックはいいから」

「いえ、そうじゃなくてあのテラスに戻ろうとしている二人はどこかで……」

絢士は背にしていた庭の方を振り返り、神宮寺の視線の先を見た。

「えっ、美桜?」

普段とは違う華やかな彼女に驚いた。

なんであんな格好を?

それよりも、隣にいる男は誰だ?

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