猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

それぞれの想い


両親の乗ったプライベートジェットが行方不明だと知らされたのは14の夏。

きっと時間が解決してくれるよ、
そう誰もが言ってくれた慰めの言葉

確かにあれから何年も過ぎて
怒りや悲しみに打ちのめされることはなくなった。

それでも……

時々何気ない日常の中に発見した歓びや
ふとやるせない寂しさを感じたときに

父がいたらどう思っただろう?
母がいてくれたらよかったのに……

そう思う気持ちがなくなることはない

でも幸せな事に、私には兄が二人いて家族も同然の親友やおじ様がいる。

そして、このお屋敷には私が生まれた時から一緒に暮らしている大切な人たちも。

「おまえとこうして庭を散歩するのは久しぶりだな」

案の定、蓮はいつもより早く帰宅したので美桜は兄を誘って庭に出た。

妹が言うのもなんだけど、薄暗い月明かりの元ではっきり見えなくても兄は罪深いほどハンサムだと思う。
家系の遺伝子に流れる良いところが、すべて上手く組み合わさって出たんだ。

神様って時々イタズラするのよね。

両親が亡くなって親代わりに高校の行事に蓮が来ると、友人達が夢見るような瞳で兄を見ていた。
みんなが知らない中身は、頑固で意地悪で、典型的な兄なのに。

「勇蔵さんに聞いたぞ?薔薇の苗をもって帰ってきたんだって?」

「うん」

私の様子が変な事に気づいた陽人が日向に言って、蓮に言わないはずがない。


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