猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

「美桜、明日は絵を見に来ないか?」

え?話をそらされた?

「明日?今日これから絢士さんの家に行かないの?」

「行くよ」

「じゃあ……」

「絵はさ、実家にあるんだ」

「ご実家に……」

「そう、だから忘れてたっていうのもある」

いつの間にか肩を抱いていた手が、いつものように感触を楽しむように私の髪をとく。

絢士さんと付き合う前にそろそろ短く切ろうと思っていたのに、この手が好きで切れなくなってしまった。

「それで、ついでに会わせたい人がいるっていうか、もれなく会うことになる人がいるんだ」

「誰?」

「みゆきさんって母親」

うっとり閉じかけた瞳がパッと開いた。
お母様!!

「どうしようって顔に書いてある」

髪を解いていた手に軽く頬を摘ままれた。

おかしいわ?、
私の顔はあなたみたいに正直ではないのに!

「痛い」

本当は痛くないけれど。

「まだ早いか?」

「そうじゃないの、あの、あの……」

美桜はぶんぶんと首を振る。
話の展開に頭がついていけない。

「前に進まないか?」

絢士が手を絡めて力を込めた。

「それって……」

「二人のこと、真剣なものにしたい、美桜」

名前を呼ばれて見上げれば、胸がぎゅっと鷲掴みにされる。

「愛してる」

微笑みながら近づいた唇がちゅっと軽く合わさった後、ゆっくり重なり優しく想いを告げられて、唇が離れた時には美桜の瞳に涙が滲んでいた。

絢士に強く抱きしめられて、美桜は世界一幸せな気持ちで涙を流していた。


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