RUBY EYE
自分よりも年下の相手に、光彦はいつも負けていた。
剣術も、勉強も、容姿も、その心の在り方でさえも。
嫌いだった、憎かった。
いつも澄ました顔の十夜が、怒りや恐怖におののく姿を見たいと、浅ましいが思っていた。
「お前に弱点なんか、ないと思ってたよ」
「な、何?」
ナイフが、じわじわと胸元に近づいていく。
手を離そうにも、力が強すぎる。
「何をするつもりだ、光彦」
十夜が駆け出す瞬間、肉を貫く音が、耳に響いた。
「あ、あ・・・・・・」
あまりの出来事に、悲鳴さえも出なかった。
手に伝うのは、生暖かい血。
月野の白い手を、赤い血が染め上げていく。
「痛いなぁ・・・・・・」
光彦が、悲しげに微笑む。
ナイフが貫いたのは、光彦の心臓。
そのナイフを握っているのは、月野の手だ。
肉を貫いていく生々しい感触が、ナイフ越しに伝わってくる。