RUBY EYE

森の中に足を踏み入れたのは初めてだ。

月野は月明かりを頼りに、教会を探す。


「綾織くん・・・・・・」


自分に何ができるのか、考えてみた。

ヴァンパイアのように強くもないし、傷もすぐには癒えない。

かといって、ダンピールの力も振るえはしない。


奇跡なんて、この身には一つもありはしないのだと、気づく。

それでも、自ら歩むことを忘れてはいけない。

母は言っていた。

【人の手ばかり借りていてはダメ。自分の足で立ちなさい】

だから、迷わず歩く。


十夜に言わなきゃいけないこともあるから。

自分の気持ちは、自分の言葉で伝えないと。


「教会・・・・・・」


蝋燭の明かりで、不気味にその存在を主張する、白い教会。

月野は扉の前に立ち、小さく深呼吸をする。


「・・・・・・大丈夫」


扉の向こうに何があろうとも、歩む足は―――止めない。

月野は真っ直ぐに前を見て、ゆっくりと重い扉に手を添えた。


それは、ほんの少しだけ長い、闇の幕開けだった―――。


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