RUBY EYE

月野が無事で、ちゃんと生きて、自分の前にいる。

それだけで、こんなにも嬉しい。


「嫌! 嫌嫌嫌!! 私の前で、そんな女と・・・・・・。いやぁ―――!!!」


狂ったような悲鳴は、夜に染まる森に響き渡る。

月野はその叫びに、身を震わせた。


それは、彼女が理性を完全に捨てた瞬間だった。


「月野、ここにいろ」

「でも・・・・・・」


十夜は微笑むと、摩耶に刀を向けた。

もう、迷いはない。


「摩耶。ここでお前を殺す」


それが、自分が彼女に贈れる、せめてもの慈悲と優しさだ。


「嫌・・・・・・いやいや嫌ッ」


流れる涙は、悲しみなのか、怒りなのか、憎しみなのか。

彼女の目に映る世界は、きっと、絶望でできている。


「私を愛してると言って! 私だけを見てるでしょう?」


縋るような願いに、十夜は首を振る。

彼女の前で偽り続けた自分の心。

もう、偽ることはやめたんだ。


< 378 / 403 >

この作品をシェア

pagetop