エレーナ再びそれぞれの想い
 巨大樹は、元々人間界の植物……
それは、五千年余り前までに遡る。
人間界では、戦乱の果て、怒りや憎しみ、そして悲しみなど、人々の負の感情が著しく増幅、それは、マイナスエネルギーという負のエネルギーを生み出した。
マイナスエネルギーは、負の感情の高まりによって増幅、やがて破滅的なエネルギーと化す。
マイナスエネルギーは、暴走し誰も止められなくなった。
巨大な負の力は、時空の壁をも破壊する勢いだった。
その時、マイナスエネルギーの暴走に巻き込まれた植物の種が、エネルギーと共に時空の壁を超え、異世界へと飛んだ。
そして、たどり着いたのがこの地。
種はそこで発芽。当時、この場所は誰もいない、不毛の地。
人間に脅かされることなく成長した芽は、1000年もの時を経て、巨大樹となった。
巨大樹は、その間人間界を見守り続け、意思を持つようになった。
知恵やさまざまな能力も身に付けた。
巨大樹はやがて、天使を産み、その数を増やしていった。
天使達は、天上界を創り、人間社会から不幸を取り除こうとした。
全ては巨大樹の意思によるもの……
 
「巨大樹の力が低下し始めた頃、人間界に同じ植物がないか、くまなく探させました。
しかし、気候の変動等などで、人間界では遥か昔、絶滅していたようです」
エレガンス幹部は、巨大樹の力が低下し始めた頃、少しでも生き長らえさせる方法がないか、複数の方法を模索していた。
清らかな人間を捜し出し、協力を求めるのと並行して、天使達に、人間界で同じ植物を探させていたのだった。
エレガンス幹部の言葉にエレーナはひどく落胆した。

 エレーナ達のそばで、ずっと座って会議の行方を見守っていたシュウ。
彼は、ずっと何やら考え込んでいたが、やがてその表情が変わった。
シュウは突然立ち上がると、
「僕を新天上界へ行かせて下さい」
と言った。
それは、シュウの中である決意が固まった瞬間でもあったのだ。
「僕に新天上界のマリアンヌさんとの交渉をさせて下さい」
それは、あまりにも突然の事であった。
「いきなり何を言い出すの?」
さやかが、慌ててシュウに発言をやめさせようとした。
幹部達がざわついた。
「天使間の交渉を人間にやらせるんですか? しかもシュウは幽霊ですよ」
「そんな話、聞いた事がありません」
幹部達がざわつく。
「シュウ君、貴方、自分が何を言っているか分かっているの?
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