エレーナ再びそれぞれの想い
 「天上界ってすごく綺麗で幸せな所だ。
見た事のないおいしそうな果物がたくさん生っていて、これでケーキを作ってみんなに
食べさせたかったな」
「こんな時に何を言い出すの?」
マリアンヌは、自分が死にかけているのに笑ってそんな話をする貴幸の気持ちが理解出
来なかった。
「僕の家、ケーキ屋なんだ。
あの果物でおいしいケーキを作って、みんなで食べたら、きっと幸せな気持ちになれる
だろう。
でも今は、戦争中だから無理か。
何時か必ず、戦争は終わる。そしたら、再び幸せが訪れるんだ。
そのためにも、早く戦争が終わって欲しい。
人間も天使も誰も傷つかない、みんな笑って暮らせる幸せな世界。
みんな……幸せに……なれるといい」
貴幸は、息絶え絶えにそう言った。
「もう、喋らないで!」
マリアンヌは、貴幸の話を聞きながら涙を流した。
「そんな……悲しい顔をするなよ。それじゃ……人を幸せに出来ないよ」
貴幸は、マリアンヌの頬をやさしくなで、そっと手で涙をぬぐった。
まず、君が幸せにならなくちゃ。天使だって幸せになるべきだと思う」
貴幸は、笑っていた。
自分が死ぬというのに、他者の幸せを願っていた。
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