エレーナ再びそれぞれの想い
シュウはがっくりと座り込んでいた。
シュウの様子がおかしい事に気づいたエレーナが話しかける。
「あの、シュウ君?」
シュウは肩が震え顔が強張っている。やがて立ち上がり、
「僕、僕」
そして、「わー」と奇声を発すると駆け出した。
「どこへ行くんですか?」
シュウは寮の屋上へ駆け上がった。心配したエレーナ達も後を追った。
「シュウ君」
エレーナがシュウに近づこうとする。
「来ないで下さい!」
シュウはさらに興奮し続ける。
「僕は… 僕は、幽霊。自分は既に死んでいた。そういうことだったんですね」
まさかこのような形でシュウが本当の事を知ることになろうとは、シュウ自身も、エレーナ達も想定外だったに違いない。
「気づいてしまったのですね」
エレーナは、シュウにそれ以上言葉を掛けられない。
「おかしいと思ったんです。
学校のみんなは、ある日突然僕に気づかなくなった。
話しかけても返事をしなくなった。最初はしかとされていると思った。
でも違った。僕が見えなかったんだ。声も聞こえなかったんだ。
だから気づいてもらえなかった。
エレーナさんが、僕に光りの術をかけてから普通に見えるようになった。
エレーナさん達は最初から僕が死んだって知っていたんでしょ?」
「それは……」
「どうして本当のことを教えてくれなかったんですか?」
「もうやめて。これ以上エレーナさんを責めないで」
プリシラが止める。
「プリシラさん、私のことはいいのよ」
エレーナはプリシラをなだめる。
「でも……」 
プリシラは、エレーナがシュウの事でどれだけ心を痛めてきたか、何時もそばで見てきた。
だから、ついむきになってしまった。
「何度も言おうと思った。でも本当のことを言ったらシュウ君が傷付く。
だから言えなかった。本当に御免なさい」
 
シュウの部屋には、まなみが時々話し相手をしてもらいに来た。
そして、エレーナ達とも知り合いになった。
なつみは、シュウが怖気づいて学校を出て行くだろうと目論んだ。
だが、期待に反していつまでたっても出て行く気配がない。
むしろ、何事もなかったかのように。なつみは焦燥感に駆りたてられた。

まなみは相変わらず、普通の人には見えず、シュウや天使達以外とは話せない。
シュウは、まなみにこんな提案をした。
「まなみさん、僕と一緒に学校に行きませんか?
 
 
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