エレーナ再びそれぞれの想い
ジェシーは、契約管理システムの端末を操作し、マイナスエネルギーが発生して
いないか調べていた。
元々この機器は、契約者以外のマイナスエネルギーを捕え、監視することが出来なかった。
かつて、エレーナの前の契約者であった、宮原慎一は、不幸な生い立ちから自分でも気づかないうちに、マイナスエネルギーを増幅させ、人間界、天上界を滅ぼすほどまで危機的な状況になり、天上界上げて、マイナスエネルギーを浄化した事があった。
天上界は慎一がエレーナと契約するまでマイナスエネルギーを発見出来ず、放置されてきた。
長年蓄積され、巨大化したマイナスエネルギーは何時暴走してもおかしくない
状態で、天上界は浄化に手をやいた。
以降、機器を改良し、契約者以外のすべての人間のマイナスエネルギーを調べられるようになった。
もし、マイナスエネルギーが発生すれば、地域ごとにその分布図が表示される。
ジェシーが分布図を表示させる。
「これは」
地域的にばらつきはあるが、世界中で、マイナスエネルギーが発生していた。
しかし、まだ散発的に発生している段階で、今のところこれらが繋がり、巨大化する様子はない。
「やはり、思った通りだ」
ごくまれにではあるが、宮原慎一のようにたった独りでも、全世界を滅ぼすほどの巨大なマイナスエネルギーを発生させる事だってある。
各地に発生しているマイナスエネルギーが小規模に留まっている間はいい。
だが、エネルギー同士が互いに連鎖反応し、共鳴するようになると危険だ。
今は分散しているエネルギー同士が共鳴によって繋がり成長、巨大化する危険性があるからだ。
ジェシーは、これを最も懸念していたのだ。
天上界は、今から5000年余り前、人間界のマイナスエネルギーの暴走によって誕生した。
その天上界が皮肉にもマイナスエネルギーによって滅ぼされる可能性もないとは言えない。

 雨はまだ、降り続いていた。
シュウは母に電話していた。
「あれ? 繋がらない。話しちゅうかな?」
「どうしたんですか?」
プリシラがシュウの様子が気になり話し掛けて来た。
「実家に電話が繋がらないんです」
シュウは何度か掛け直してみた。でもやはり繋がらなかった。
「また後で掛けてみます」
彼は少し時間を置いて掛け直してみる事にした。
電話が繋がらなかったのは、話し中でも何でもない。
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